今回は、ちゃんとした定義にいきたいと思います。
まずは、IOFDS(International Open Forum of Data Society)で(真野さんが)苦労してまとめた定義は、以下です。
“Data Space” is a distributed system defined by a governance framework that enables secure and trustworthy data transactions between participants while supporting trust and data sovereignty.
たったこれだけの簡潔な定義なのですが、それでもこれを合意するのは、結構たいへん。それくらい、データスペースとはなにか?は、立場や人によって多くの考え方があるということなのです。その多様な考え方の多くの人がいる中で、どうやってデータを共有するのか、データを流通させるのか、そのためのコンセンサスを得て、どうガバナンスして、どういう技術的仕組みを使うのかは、なかなか大変、ということが、この短い定義からもうかがい知ることができます。
ドイツのIDSAは、以下のように定義しています。
“A data space” is a secure and standardized digital infrastructure that enables trusted data exchange and data-based services among various stakeholders.
「データスペース」とは、様々なステークホルダー間で信頼性の高いデータ交換とデータに基づくサービスを実現する、安全で標準化されたデジタルインフラストラクチャである。
別のドキュメントでは、以下の様にも言っています。
“A data space” is a virtual space that provides a standardized framework for data exchange, based on common protocols and formats, as well as secure and trusted data sharing mechanisms.「データスペース」とは、共通のプロトコルとフォーマットに基づくデータ交換のための標準化された枠組み、ならびに安全で信頼性の高いデータ共有メカニズムを提供する仮想空間である。
どちらをみても、IDSAは定義では、「標準化」とか「共通」という単語が強調されています。多様な仕組みに相互運用性をもたせることより、唯一の仕組みによって相互運用性を実現させようという考え方が見えてきます。
また欧州でもGaia-Xは以下のように定義しています。
Data Space: Interoperable framework, based on common governance principles, standards, practices and enabling services, that enables trusted data transactions between participants.データ空間:共通のガバナンス原則、標準、慣行、および支援サービスに基づく相互運用可能な枠組みであり、参加者間の信頼できるデータ取引を可能にする。
このあたり、少し読み方を解説したいと思います。
IDSAは、”Standardized” frameworkといっていましたが、Gaia-Xは、”Interoperable” frameworkといっています。Data Spaceが”Space”(宇宙)だとするならば、その宇宙は、UniverseなのかMultiverseなのかという根本的な宇宙論の違いがあります。
もう少し簡単に言えば、お話をするときに、英語というStandard言語を使えと言っているか、英語でもフランス語でもドイツ語でもよいので、通訳を使ってお話しましょうと言っているのかの違いです。これは、かなり大きな違いで、実は欧州のなかでも、これほど違うのです。
ましてや、ここに日本、米国、中国、インド、、などが出てくると、ますます違いがあることが推測されます。私も、まだ、そんんなにここを突っ込んで調べてないので、あまり詳しいことは言えないのですが、定義からしてこんな感じです。
越塚登(2025年9月12日)